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神戸地方裁判所尼崎支部 昭和45年(ワ)481号 判決 1973年11月30日

主文

一、被告は原告に対し、別紙目録記載の建物部分を明渡し、昭和四五年八月三〇日から右明渡しずみまで、月額四万五〇〇〇円の割合による金員を支払え。

二、訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

(原告)

一、主文同旨の判決

二、仮執行の宣言

(被告)

一、原告の請求を棄却する。

二、訴訟費用は原告の負担とする。

第二、当事者の主張

(請求原因)

一、原告は、別紙目録記載の建物部分(本件建物部分という)を所有しているが、昭和四四年一二月下旬頃被告に対し、本件建物部分を賃料月額四万五〇〇〇円、毎月五日に原告方に持参支払う約で賃貸した。

二、1、前記建物部分の賃貸借契約においては、賃借人に左記のような言動があつたときは、賃貸人は何らの通告を要せず直ちに契約を解除することができる旨定められている。即ち、賃貸契約書一〇条六号には、「粗暴なる言動を用い、または濫りに他人と抗争したるとき。」、同条七号には、「策略を用い、または他人を煽動して本シヨツピングセンターの秩序を紊し、或は運営を阻害せんとする等不穏の言動ありと認めたるとき。」、同条八号には、「多数共謀して賃貸人に対して強談威迫をなしたるとき。」等の場合がそれである。

2、被告は、原告の再三の注意を無視して、本件建物部分の前の公道上まで商品を陳列し、しばしば警察より警告されてきた。

3、被告は、青物商であり、果物を販売してはならない特約があるのにこれを無視し、被告の南隣の池田果物店と同一の果物を、利益を度外視した安価で販売し、そのため同果物店の業績を低下させ、同果物店より原告に対し、右営業妨害の苦情があり、その都度原告が被告に注意しても、被告は反抗的態度に終始している。

4、また、被告は、なかよし屋こと山田青物店の店舗前陳列品に接して被告店の青物を陳列し、顧客をしていずれの店の商品であるか識別を困難にさせ、山田青物店の営業妨害を継続した。

5、次に、被告は、被告および森村藤一の各従業員と共謀して、昭和四五年七月二七日被告店舗先路上において、原告代表取締役神行信義が被告に注意したことを契機として、同人に暴力を振い、同人に頭部打撲傷等により全治三週間を要する傷害を負わせた。このため、被告は、神戸地方裁判所尼崎支部において罰金刑に処せられた。

6、以上2ないし5の被告の行為は、前記契約書一〇条の六ないし八号に該るものであるから、第一次的に右約定に基づき、本件訴状の送達をもつて、本件建物部分の賃貸借契約解除の意思表示をし、第二次的に、以上は賃貸借の継続を著しく困難ならしめるような不信行為のあつた場合に該るから、右を原因として、前同様の方法をもつて本件建物部分の賃貸借契約解除の意思表示をする。

三、そこで、原告は被告に対し、本件建物部分を明渡し、本件訴状送達の日の翌日にあたる昭和四五年八月三〇日から右明渡しずみまで、月額四万五〇〇〇円の割合による賃料相当損害金を支払うべきことを求める。

(答弁)

一、請求原因一の事実は認める。

二、同二の事実は争う。

三、原告主張の契約書一〇条の六号ないし八号の特約は、借家法一条の二に反するもので、賃借人に不利なものであるから、同法六条により無効である。

四、原告の本件明渡しの請求は権利の濫用として許されない。即ち、被告は、本件魚神シヨツピングセンターに入居するに際しては、親類知友の援助を受けて苦心のうえ敷金二〇〇万その他資金を捻出し、青物業を初めたこと、被告に契約書一〇条六号に該る行為があつたとしても、それは十分な理由に基づく単なる一時的な行為にすぎないこと、本件建物部分での営業に、被告家族のほか、被告の親、被告の弟、被告の使用人の生活がかかつていること、以上の諸事情によつてである。

(被告の主張に対する原告の答弁)

被告の答弁三、四の主張は争う。

第三、証拠関係(省略)

別紙

目録

尼崎市七松町一丁目一四〇番地

家屋番号 一四〇番

鉄骨造陸屋根二階建店舗

一階 二一八・四〇平方米

二階 一八八・七一平方米

のうち

一階の別図斜線部分一三・一六平方米(別図リヌルヲ部分)

別紙

<省略>

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